税の豆知識

2008年11月号『事業承継』


寒くなりました。ストーブが必要となってしまいました。灯油の給油が手間ですよね。
いかがお過ごしでしょうか。

前回は固定資産税について、次回に負担調整について、ということでしたが、急遽予定を変更して事業承継について述べようと思います。
といいますのも、当事務所にて来る11月6日に「事業承継セミナー」を行うことになったからです。





中小企業の事業承継の際、「親の株を相続する際、多額の相続税が出る」ことが一番の問題点といえましょう。それが事業承継を阻害しているといえました。

この問題の処方箋として「中小企業経営承継円滑化法」が出来ました。正式には「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」といいます。この法律は従来円滑化の阻害要因であった「民法上の遺留分の制約」「代表者交代による信用不安」「多額の相続税負担」の三点について特例を出し、円滑な事業承継を推進することが目的とされています。

今回はその中の「多額の相続税負担」という問題点を解決するための特別措置について解説します。

それは「取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度」です。

これは、一定の要件の下、事業承継相続人が、相続等により取得したその会社の発行済議決権株式等の総数等の3分の2に達するまでの部分に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税を猶予するという制度です。

事業承継相続人」とは、中小企業の経営の承継の円滑化に関する法律における経済産業大臣の認定を受けた一定の中小企業の発行済株式等について、同族関係者と合わせその過半数を保有し、かつ、その同族関係者の中で筆頭株主である後継者をいいます。会社を経営していた被相続人は、その会社の発行済株式等について、同族関係者と合わせその過半数を保有し、かつ、その同族関係者(事業承継相続人を除く。)の中で筆頭株主であったことを要します。

中小企業においては、その大株主が代表者として経営に従事し、個人資産を会社の事業の用や担保に供していることが多くあります。このような中、経営者に係る相続の発生は、単に家庭内の私的問題に留まらず、会社の事業の継続・発展に大きな影響を与えます。経営者の相続財産の多くは株式等の事業用資産。換金性の乏しい非上場株式等に係る相続税負担は、結果として、会社の経営の不安定化を招きかねません。今回の事業承継税制の抜本拡充により、中小企業の事業の継続・発展に際しての障害を除去することが可能となり、地域の雇用確保、経済活力の維持が実現できます。

その他の改正事項を列挙すると以下の通りです。


  1. 納税猶予の対象となる株式等のみを相続するとした場合の相続税額から、その株式等の金額の20%に相当する金額の株式等のみを相続するとした場合の相続税額を控除した額が猶予税額とされます。
  2. その事業承継相続人が納税猶予の対象となった株式等を死亡の時まで保有し続けた場合など一定の場合には、猶予税額が免除されます。
  3. その事業承継相続人が、相続税の法定申告期限から5年の間に、代表者でなくなる等、中小企業の経営の承継の円滑化に関する法律(仮称)に基づき経済産業大臣の認定が取り消された場合等には、その時点で、猶予税額の全額を納付します。
  4. 上記3.の期間経過後において、納税猶予の対象となった株式等を譲渡等した場合には、その時点で、納税猶予の対象となった株式の総数等に対する譲渡株式の総数等の割合に応じた猶予税額を納付します。
  5. 上記3.又は4.により、猶予税額の全額又は一部を納付する場合には、その納付税額について相続税の法定申告期限からの利子税も併せて納付します。
  6. この特例の適用を受けるためには、原則として、納税猶予の対象となった株式等のすべてを担保に供しなければなりません。
  7. 個人資産の管理等を行う法人の利用等による租税回避行為を防止する措置が講じられます。
  8. 中小企業の経営の承継の円滑化に関する法律(仮称)の施行日以後に開始した相続等から適用を可能とする措置その他所要の措置が講じられます。
  9. 現行の特定同族会社株式等に係る相続税の課税価格の計算の特例は、所要の経過措置が講じられたうえで廃止されます。


あくまで相続によって会社の経営に支障がないようという支援政策で、積極的な優遇措置ではありません。また、М&Aなどの手法を用い経営をドラスティックに変えるような方には向いていません。経済産業大臣の認定が事前にいる(宥恕規定もあります)とか、性風俗関係の会社は適用できないなど種々の規制もありますので注意が必要です。

一度検討してみることは必要ですので、ご不明な点は当事務所までお問い合わせください。
それではよろしくお願いいたします。




2008年の目次

12月号『事業承継2』
11月号『事業承継』
10月号『固定資産税』
9月号『住民税』
8月号『税理士事務所のあり方』
7月号『加算税』
6月号『所得税-その20…雑所得』
5月号『所得税-その19…一時所得2』
4月号『所得税-その18…一時所得』
3月号『所得税-その17…譲渡所得3』
2月号『所得税-その16…譲渡所得2』
1月号『所得税-その15…譲渡所得』
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