税の豆知識

2008年5月号『所得税 その19-一時所得2』


ゴールデンウィーク直前。皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回も一時所得について続けます。




実務で一時所得が登場するのは、保険の満期が比較的多いですが、その一時所得と保険の関係を見てみると面白いことがわかります。

交通事故や病気などで被保険者が死亡し、保険金受取人が死亡保険金を受け取った場合には、保険料の負担者、保険金受取人、被保険者がだれかにより、所得税、相続税、贈与税のいずれかの課税の対象になります。

◆死亡保険金の課税関係の表
保険料の負担者被保険者保険金受取人税金の種類
所得税
相続税
贈与税
(注)被保険者Aが死亡したものとする。

まず、所得税が課税されるのは、上記の表のように、保険料の負担者と保険金受取人が同一人の場合です。この場合の死亡保険金は、受取の方法により、一時所得又は雑所得として課税されます。

  1. 死亡保険金を一度に受領した場合
    死亡保険金を一度に受領した場合には、一時所得になります。
    一時所得の場合の所得の金額は、その死亡保険金以外に一時所得がないとすれば、受け取った保険金の総額から既に払い込んだ保険料を差し引き、更に一時所得の特別控除50万円を差し引いた金額です。課税の対象になるのは、この金額を更に1/2にした金額です。 ですから、親から子や孫に、毎年、保険料相当額の資金を贈与し、契約者と受取人は子や孫、被保険者を親として生命保険に加入する方法があります。毎年1人あたり110万円の保険料に相当する資金を子や孫や嫁の6人に贈与しますと、年間660万円、10年間で6,600万円の財産が移転します。そして、親の相続の時に子供や孫に支払われる保険金は、当然相続税の対象ではなくなり、一時所得として低い所得税の課税となるため、二重の節税効果があります。
  2. 死亡保険金を年金形式で受領した場合
    死亡保険金を年金形式で受領した場合には、公的年金等以外の雑所得になります。
    雑所得の場合の所得の金額は、その年に受け取った年金の額に対応する払込保険料の額を差し引いた金額です。受け取る際には、原則として所得税が源泉徴収されます。

相続税が課税されるのは、上記の表のように、死亡した被保険者と保険料の負担者が同一人の場合です。
受取人が被保険者の相続人であるときは、相続により取得したものとみなされ、相続人以外の者が受取人であるときは遺贈により取得したものとみなされます。
なお、相続により取得したものとみなされる場合には、相続人全体で、500万円に法定相続人の数を乗じて計算した金額までは非課税で、これを超える部分の金額が相続税の対象になります。

また、贈与税が課税されるのは、上記の表のように、保険料の負担者、被保険者、保険金の受取人がすべて異なる場合です。
この場合の死亡保険金は、原則としてその年に贈与を受けた他の財産と合計され、基礎控除の110万円が差し引かれて課税されます。

今回は以上です。




2008年の目次

12月号『事業承継2』
11月号『事業承継』
10月号『固定資産税』
9月号『住民税』
8月号『税理士事務所のあり方』
7月号『加算税』
6月号『所得税-その20…雑所得』
5月号『所得税-その19…一時所得2』
4月号『所得税-その18…一時所得』
3月号『所得税-その17…譲渡所得3』
2月号『所得税-その16…譲渡所得2』
1月号『所得税-その15…譲渡所得』
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