税の豆知識

2008年2月号『所得税 その16-譲渡所得2』


お正月気分も完全に抜けいよいよ確定申告も見えてきました。皆様いかがお過ごしでしょうか。

今回も譲渡所得について述べたいと思います。

譲渡所得の所得計算は、土地建物を売った時の所得と、土地建物以外の資産を売ったときの所得とに大きくわかれ、前回は土地建物を売った時のお話をしました。今回は土地建物以外の資産を売った時を解説します。




譲渡所得の計算は、資産を売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて行います。取得費とは、一般に購入代金のことで、購入手数料や設備費、改良費なども含まれます。譲渡費用とは、売るために直接かかった費用のことです。

そして前回解説の土地建物や株式等を売った場合以外は、給与所得や事業所得などの所得と合わせて総合課税の対象となります。そしてこの総合課税の譲渡所得は、取得したときから売ったときまでの所有期間によって長期と短期の二つに分かれます。

長期譲渡所得となるのは、所有期間が5年を超えている場合で、短期譲渡所得となるのは、所有期間が5年以内の場合です。土地建物は譲渡した年の1月1日で長期か短期か判定しますが、今回は違います。純粋に5年です。ただし、次の四つの場合には、所有期間が5年以内の場合でも長期譲渡所得となります。

  1. 自分が研究して取得した特許権や実用新案権などの工業所有権
  2. 自分が著作した著作権
  3. 自分で発見した鉱山などの採掘権
  4. 自分の育成による育成者権

総合課税の譲渡所得の計算は以下のとおりです。

まず、資産を売った金額から、取得費と譲渡費用を差し引いて譲渡益を出します。次に、この譲渡益から、更に、譲渡所得の特別控除を差し引きます。譲渡所得の特別控除の額は、その年の長期の譲渡益と短期の譲渡益の合計額に対して50万円です。その年に短期と長期の譲渡益があるときは、先に短期の譲渡益から特別控除の50万円を差し引きます。なお、これらの譲渡益が50万円以下のときは、その金額までしか控除できません。この特別控除の額を差し引いた後の金額が、譲渡所得の金額になります。

短期譲渡所得の金額は全額が総合課税の対象になりますが、長期譲渡所得の金額はその2分の1が総合課税の対象になります。




ところで、生活に通常必要な家具、什器、衣服などを譲渡したことによる所得は、非課税所得ですから課税されません。

ただし、生活に通常使われている資産であっても、次に掲げるようなもので、1個又は1組の価額が30万円を超えるものの譲渡による所得については、譲渡所得として課税されます。

  1. 貴石、半貴石、貴金属、真珠及びこれらの製品、べつ甲製品、さんご製品、こはく製品、象牙製品並びに七宝製品
  2. 書画、骨とう及び美術工芸品

では自動車どうなるでしょうか。

いわゆるマイカーといわれるものが、通勤用、レジヤー用のものである場合には、その自動車は、生活用の動産に該当し、その譲渡益は非課税となります。しかしそれが高級スポーツカーとなりますと、そうはいきません。譲渡益は課税となります。

なお、事業用の自動車は事業用の固定資産に該当しますので、その譲渡益はもちろん課税です。あくまで譲渡所得で事業所得ではありません。ですから、事業所得の方が帳簿をつける上で、その事業用資産を譲渡した場合は、法人のように固定資産売却益にはなりません。事業主借(店主借)となり、事業所得の収入とはしません。確定申告で譲渡所得として事業所得とともに合算して申告するわけです。

では譲渡が何件もあり、それが土地・建物の譲渡の分離課税の短期のもの長期のもの、総合課税の短期のもの長期のもの、しかもそれぞれ譲渡益があるものと譲渡損があるものが混在している場合はどうなるのでしょうか。

次回はこのあたりを解説したいと思います。




2008年の目次

12月号『事業承継2』
11月号『事業承継』
10月号『固定資産税』
9月号『住民税』
8月号『税理士事務所のあり方』
7月号『加算税』
6月号『所得税-その20…雑所得』
5月号『所得税-その19…一時所得2』
4月号『所得税-その18…一時所得』
3月号『所得税-その17…譲渡所得3』
2月号『所得税-その16…譲渡所得2』
1月号『所得税-その15…譲渡所得』
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