税の豆知識

2008年3月号『所得税 その17-譲渡所得3』


確定申告真っ只中。皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回も譲渡所得について述べたいと思います。




譲渡が何件もあり、それが土地・建物の譲渡の分離課税の短期のもの長期のもの、総合課税の短期のもの長期のもの、しかもそれぞれ譲渡益があるものと譲渡損があるものが混在している場合はどうなるの。

今回はこのあたりを解説したいと思います。

土地等又は建物等を譲渡して長期譲渡所得(譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超える土地等又は建物等の譲渡による所得)又は短期譲渡所得(譲渡の年の1月1日における所有期間が5年以下の土地等又は建物等の譲渡による所得)の金額の計算上譲渡損失の金額が生じた場合。

・・・その損失の金額を他の土地等又は建物等の譲渡に係る長期譲渡所得の金額又は短期譲渡所得の金額から控除し、その控除をしてもなお控除しきれない損失の金額は生じなかったものとみなされ、その損失の金額を土地等及び建物等以外の譲渡所得の基因となる資産の譲渡利益の金額と通算したり、また、他の各種所得の金額と損益通算することはできません

逆に、土地等又は建物等を譲渡して長期譲渡所得の金額(利益)又は短期譲渡所得の金額(利益)がある場合において、その年に土地等及び建物等以外の資産の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上若しくは不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上それぞれ損失の金額が生じた場合。

・・・それらの損失の金額を土地等又は建物等の譲渡に係る譲渡所得の金額から控除することもできません。

3年ほどの前までの税制では通算できたものですから、たとえば給与所得者などは譲渡損を確定申告し、給与所得の源泉所得税を還付してもらうのが通例になっていました。損が損として税務上も当たり前に認められていたのです。しかし、譲渡所得の税率が26%から20%に減額される見返りとして100万円の特別控除がなくなり、この他の所得との通算も認められなくなりました。減税ばかり声高にさわがれましたが、実際には増税となっている納税者もかなりいると思います。

ただ、譲渡の年の1月1日において所有期間が5年を超える居住用財産を譲渡したことにより生じた譲渡損失の金額については、一定の要件を満たす場合に限り、譲渡をした年における他の譲渡所得の基因となる資産の譲渡利益との通算や他の各種所得の金額との損益通算をすることができ、これらの通算を行ってもなお控除しきれない損失の金額については、その譲渡の年の翌年以後3年間にわたり繰越控除することができます。このごく限られた譲渡損失だけは何とか生き残ったという感じです。ただ、これも租税特別措置法で「平成16年1月1日から平成21年12月31日までの間に」という条文となっていますので、税制改正で平成21年が延びるのか否かは定かではありません。





前述したところで「損益通算」という用語を出してしまいましたが、もう少し詳しく解説します。

損益通算とは、2種類以上の所得があり、例えば、1つの所得が黒字、他の所得が赤字といった場合に、その各所得の黒字と他の所得の赤字とを、一定の順序にしたがって、差引計算を行うというものです。要は相殺することです。

所得が赤字の場合に損益通算の対象となる所得は次の所得です。

(1) 不動産所得
(2) 事業所得
(3) 譲渡所得
(4) 山林所得

これらの所得は原則として損益通算できますが、例外もあります。

1. 不動産所得の金額の赤字のうち、次に揚げるような損失の金額は、その損失が生じなかったものとみなされ損益通算することができません。
 (1) 別荘等の生活に通常必要でない資産の貸付けに係るもの
 (2) 土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分の金額で一定のもの
 (3) 一定の組合契約に基づいて営まれる事業から生じたもので、その組合の特定組合員に係るもの

2. 申告分離課税の株式等の譲渡による事業所得の金額、譲渡所得の金額及び雑所得の金額のいずれかに赤字がある場合は、相互に差引計算できますが、株式等の譲渡による所得以外の所得の黒字とは損益通算できません。また逆に、株式等の譲渡による所得以外の所得の赤字は、株式等の譲渡による所得の黒字と損益通算できません。

3. 申告分離課税の先物取引に係る事業所得の金額及び雑所得の金額のいずれかに赤字がある場合は、相互に差引計算できますが、これらの先物取引以外の所得の黒字とは損益通算はできません。また逆に、これらの先物取引以外の所得の赤字は、先物取引の所得の黒字と損益通算できません。 そして上述しましたが・・・

4. 平成16年1月1日以後生じた譲渡所得の赤字のうち、一定の居住用財産以外の土地、建物等の譲渡所得の計算上生じた赤字については、土地建物等の譲渡所得以外の所得の黒字と損益通算はできません。

また逆に土地建物等の譲渡所得以外の所得の赤字は、土地建物等の譲渡所得の黒字と損益通算できません。

今回は以上です。




2008年の目次

12月号『事業承継2』
11月号『事業承継』
10月号『固定資産税』
9月号『住民税』
8月号『税理士事務所のあり方』
7月号『加算税』
6月号『所得税-その20…雑所得』
5月号『所得税-その19…一時所得2』
4月号『所得税-その18…一時所得』
3月号『所得税-その17…譲渡所得3』
2月号『所得税-その16…譲渡所得2』
1月号『所得税-その15…譲渡所得』
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