税の豆知識

2008年9月号『住民税』


先日の雨はひどかったですね。私は誕生日だったのに大変でした。皆様いかがお過ごしでしょうか。

前回は実務を離れ、今私が感じていることを記しました。
今回は再び税務に戻ります。




今までは国税について述べてきました。
所得税・法人税・消費税・相続税、すべて国税つまり国の税金です。ですから、国、具体的には税務署に対して申告・納税するものでした。

しかし、税金といっても種々ありまして、今回は住民税について述べたいと思います。

住民税は、「住民である」ということで課税されます。一般的に言われる「住民税」とは、「都民税・県民税」と「区民税・市町村民税」をあわせた呼び方です。

法律的には「地方税法」に謳われており、そこに道府県民税・事業税・地方消費税・不動産取得税・道府県たばこ税・ゴルフ場利用税・自動車税等の県税、そして市町村民税・固定資産税・市町村たばこ税・鉱産税・特別土地保有税・自動車取得税・軽油引取税・狩猟税・入湯税・事業所税等の市税が規定されており、それは756条にも及びます。

一番身近でほとんどの人が課税されるのが住民税、つまり市県民税ですので、その仕組みを解説します。




住民税は、前年の所得金額に応じて課税される「所得割」、所得金額にかかわらず定額で課税される「均等割」、預貯金の利子等に課税される「利子割」、一定の上場株式等に課税される「配当割」、源泉徴収口座内の株式等の譲渡に課税される「株式等譲渡所得割」からなっています。

所得割と均等割については1月1日現在都・県内に住んでいる方が課税の対象で、各区市町村が「区民税・市町村民税」と「都・県民税」をあわせて徴収します。また、住んでいなくても、事務所や家屋敷を持っている方(借りている場合も含むが、貸している場合は除く。)にも、均等割だけは課税されます。


納める額


  1. 所得割額(前年の総所得金額等−所得控除額)×税率−税額控除額 所得割については後で詳述します。
  2. 均等割額 都民税額(1,000円)+区市町村民税額(3,000円)
  3. 利子割額 利子所得等については、一律5%の分離課税となります。(このほかに所得税として15%が源泉徴収されますので、合わせて20%が課税されます。)
  4. 配当割額 特定配当等の額×5% (平成16年1月1日から平成20年12月31日までの間に支払を受けるものについては3%。ただし、特例措置として平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に支払いを受ける「年間100万円以下の特別配当等」に係る配当割の税率は3%となります。)
  5. 株式等譲渡所得割額 源泉徴収口座内における上場株式等の譲渡による所得×5% (平成16年1月1日から平成20年12月31日までの間に支払を受けるものについては3%。ただし、特例措置として平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間の「年間500万円以下の上場株式等の譲渡による所得」に係る株式等譲渡所得割の税率は3%となります。)

納める時期と方法

  1. 所得割と均等割について
    給与所得者については、6月から翌年5月までの毎月の給料から特別徴収(天引き)されます。
    そのほかの方については、区市町村から送付される納税通知書で、年4回に分けて納めます(普通徴収)。
  2. 利子割、配当割、株式等譲渡所得割について
    金融機関、配当の支払者又は証券業者等が、利子、配当割又は源泉徴収口座内の株式等の譲渡による対価等を支払う際に特別徴収し、その支払を受ける方の住所(但し、利子割は預金等をしている営業所等)が所在する都道府県に納めます。東京都では、中央都税事務所が一括して取り扱っています。

住民税の所得割

所得割は前年の所得金額に応じて課税されます。


納める方

1月1日現在都・県内に住んでいる方 となります。
ですから、高額所得の人が住所地を変更すると、そこの県や市の税収が移ります。


納める額

(前年の総所得金額等−所得控除額)×税率−税額控除額

○税率は
税源移譲により平成19年度以降の税率は一律10%(都・県民税4%、区市町村民税6%)となりました。 これは税源移譲でこうなりました。所得税の国税が減り、住民税が増え、トータルでは税額が変わらないという話です。


○所得金額とは
前年の所得を、給与、利子、事業など所得の発生別に10種類に分けて、1年間の収入金額から必要経費等を差し引いた金額のことです。
なお、給与所得の場合には、必要経費に相当するものとして給与所得控除がありまして、これは所得税における給与所得控除と同額です。


○所得控除額とは
納める方に、扶養親族が何人いるのか、病気や災害などによる出費があったかなど、個人的な事情も考えて税負担を求めるために設けられており、所得税法の所得控除とその金額が若干少額となっています。後で詳述します。


○税額控除額とは
税額を算出したのちのその税額から差し引く額のことで、住民税には次のような控除があります。

(1) 配当控除
株式の配当などの配当所得がある場合には、その金額に次の率を乗じた金額が控除されます。


◆ 住民税の配当控除額(株式の配当の場合)
区分都民税区市町村民税
課税総所得金額が1,000万円以下の
部分に含まれる配当所得の金額
配当所得金額の1.2%配当所得金額の1.6%
課税総所得金額が1,000万円を超える
部分に含まれる配当所得の金額
配当所得金額の0.6%配当所得金額の0.8%


(2) 外国税額控除
外国において生じた所得で、その国の所得税や住民税に相当する税金を課税された場合には、一定の方法により計算された金額が控除されます。


定率減税について

平成11年度より定率減税が実施されていましたが、平成19年度以降廃止になりました。


納める時期と方法は

給与所得者については、6月から翌年5月までの毎月の給料から特別徴収(天引き)されます。
そのほかの方については、区市町村から送付される納税通知書で、年4回に分けて納めます。(普通徴収)


課税されない場合は


(1) 所得割・均等割とも非課税

 ア 生活保護法による生活扶助を受けている方
 イ 障害者・未成年者・寡婦又は寡夫で、前年中の合計所得金額が125万円以下
   (給与所得者の場合は、所得税法別表第五により年収204万4千円未満)の方
 ウ 前年中の合計所得金額が区市町村の条例で定める額以下の方
   <東京都23区内の場合>
  ・控除対象配偶者又は扶養親族がある場合
   35万円×本人・控除対象配偶者・扶養親族の合計人数+21万円以下
  ・控除対象配偶者及び扶養親族がいない場合
   35万円以下


(2) 所得割のみ非課税

 前年中の総所得金額が区市町村の条例で定める額以下の方
 <東京都23区内の場合>
 ア 控除対象配偶者又は扶養親族がある場合
   35万円×本人・控除対象配偶者・扶養親族の合計人数+32万円以下
 イ 控除対象配偶者及び扶養親族がいない場合
   35万円以下

となっています。

所得控除は所得税法上の所得控除より若干小振りで、以下の通りです。

  1. 雑損控除
    次のいずれか多い額
    (1) 損失額−総所得金額等×10%
    (2) 災害関連支出の金額−50,000円
  2. 医療費控除(控除限度額は200万円)
    19年中に支払った医療費(保険金等の補てん額を除く)
    −総所得金額等 ×5%(10万円超のときは10万円)
  3. 社会保険料控除
    平成19年中に支払った額
  4. 小規模企業共済等掛金控除
    平成19年中に支払った額
  5. 生命保険料控除
    一般の生命保険料は最高35,000円
    個人年金保険料は最高35,000円
  6. 地震保険料控除
    最高25,000円
  7. 寄附金控除
    特定の寄附金の総額又は総所得金額の25%のいずれか少ない金額−10万円
  8. 障害者控除
    本人・配偶者・扶養親族(一人につき)26万円 ただし、特別障害者の場合は30万円
  9. 寡婦(夫)控除
    所得要件あり。本人が寡婦又は寡夫の場合26万円
    ただし、特定の寡婦(前年の合計所得金額が500万円以下で扶養親族の子がいる場合)は30万円
  10. 勤労学生控除(所得要件あり)
    本人が勤労学生 26万円
  11. 配偶者控除(いずれも所得要件あり)
    (1) 一般の配偶者は33万円 ただし、同居特別障害者の場合は56万円
    (2) 70歳以上の配偶者は38万円 ただし同居特別障害者の場合は61万円
  12. 配偶者特別控除(所得要件あり)
    最高33万円
  13. 扶養控除(いずれも所得要件あり)
    (1) 一般の扶養親族は33万円 ただし、同居特別障害者の場合は56万円
    (2) 特定扶養親族(16歳以上23歳未満の扶養親族)は45万円
      ただし、同居特別障害者の場合は68万円
    (3) 70歳以上の扶養親族は38万円 ただし、同居特別障害者の場合は61万円
    (4) 70歳以上の同居の親等は45万円 ただし、同居特別障害者の場合は68万円
  14. 基礎控除 33万円


となっています。

今回は味もそっけもない内容ですが、以上です。
次回はもう少し面白くいきます。




2008年の目次

12月号『事業承継2』
11月号『事業承継』
10月号『固定資産税』
9月号『住民税』
8月号『税理士事務所のあり方』
7月号『加算税』
6月号『所得税-その20…雑所得』
5月号『所得税-その19…一時所得2』
4月号『所得税-その18…一時所得』
3月号『所得税-その17…譲渡所得3』
2月号『所得税-その16…譲渡所得2』
1月号『所得税-その15…譲渡所得』
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