税の豆知識

2008年1月号『所得税 その15-譲渡所得』


あけましておめでとうございます。
いよいよ新年度ですね。皆様いかがお過ごしでしょうか。

今回は譲渡所得について述べたいと思います。




譲渡所得の所得計算は、土地建物を売った時の所得と、土地建物以外の資産を売ったときの所得とに大きくわかれます。

今回はまず、土地建物を売った時から解説いたします。

まず、その課税方法ですが、事業所得や給与所得などの所得と分離(分離課税)して、計算することになっています。前回述べた退職所得や山林所得と同様ですね。

そしてその計算方法は、売った金額から取得費、譲渡費用を差し引いて計算します。


  1. 取得費とは、売った土地や建物を買い入れたときの購入代金や、購入手数料などの資産の取得に要した金額に、その後支出した改良費、設備費を加えた合計額をいいます。
    なお、建物の取得費は、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。また、土地や建物の取得費が分からなかったり、実際の取得費が譲渡価額の5%よりも少ないときは、譲渡価額の5%を取得費(概算取得費)とすることができます。
  2. 譲渡費用とは、土地や建物を売るために支出した費用をいい、仲介手数料、登記費用、測量費、売買契約書の印紙代、売却するときに借家人などに支払った立退料、建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用などです。
    実務では、譲渡土地の取得価額がわからず、やむを得ず上述の概算取得費(価額の5%)を使うというのがほとんどです。3000万円なら150万といった感じです。


相続や贈与により取得したものは、原則として、被相続人や贈与者の取得した価額を引き継いで計算するわけですが、そんな土地の場合、「父がいくらで取得した土地か知らないし、当時の契約書も、それを証明する記録も何も残っていない。」というケースがほとんどで、「もっと高く買っていると思うのだが」とぼやきながらこの5%概算取得費を使わざるを得ないというのが実情です。もちろん取得費が分かっていてもそれが戦前の60年以上前の貨幣価値が違う時代のものであれば、今の5%の方が高くなって有利となるわけですが。

私見ですが、5%の概算取得費は低すぎると思います。60年前に10万円で取得したものを、その金額で計算するというのも出鱈目だし、いままでの固定資産税等の維持費は全く考慮されないのはいかがなものかと思います。税務は取得に直接要した費用が取得費であるとの一点張りなのです。





土地や建物を売ったときの譲渡所得は、次のとおり所有期間によって長期譲渡所得と短期譲渡所得の二つに区分し、税金の計算も別々に行います。
長期譲渡所得とは譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるものをいい、短期譲渡所得とは譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のものをいいます。

長期譲渡の場合、税額は譲渡所得の15%(住民税5%)

短期譲渡の場合、税額は譲渡所得の30%(住民税9%)

すこし乱暴なこの差です。

しかも例えば取得が平成14年4月1日で譲渡が平成19年4月2日の場合、5年経過していますが、これは短期譲渡となります。譲渡した年の1月1日においては所有期間は5年以下だからです。そして税率はほぼ倍となってしまいます。これもひどい話です。もう少し段階的にわけたほうがいいと私は思います。

今回は以上です。




2008年の目次

12月号『事業承継2』
11月号『事業承継』
10月号『固定資産税』
9月号『住民税』
8月号『税理士事務所のあり方』
7月号『加算税』
6月号『所得税-その20…雑所得』
5月号『所得税-その19…一時所得2』
4月号『所得税-その18…一時所得』
3月号『所得税-その17…譲渡所得3』
2月号『所得税-その16…譲渡所得2』
1月号『所得税-その15…譲渡所得』
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