税の豆知識2007年11月号『所得税 その13-退職所得2』寒くなってきました。皆様いかがお過ごしでしょうか。 前回予告したように、今回は役員退職金、死亡退職金について述べたいと思います。 会社の役員でも、改選されることなく、任期を終えて受ける役員退職金、退職慰労金などでも、それにかかる所得税は従業員さんと同一の退職所得となり、その所得税額の計算方法は前回記述したとおりです。 ところで税理士事務所としての実務の上でよく取り沙汰されるのは、役員の死亡退職金です。といいますのも、この役員の死亡退職金は遺族に支給されるものですが、これは500万円×法定相続人の数の非課税枠があるからです。つまりその非課税金額を控除した金額が相続税の相続財産として課税対象になるのです。 何が言いたいかと言いますと、たとえば極端な話、会社の社長が死亡し、相続人が3名、相続財産は死亡退職金のみで9500万円の場合、まず1500万円の非課税枠があり、8000万円が相続財産となる。しかし相続税の基礎控除が8000万円あるから相続税は出ないことになります。しかも、それを支払った法人側は、ほとんどの場合損金(経費)となり、法人税が減るというわけです。 言いたいことを一気に言ってしまったので、今一度かみしめる意味で解説したいと思います。 一口に退職金といっても、それが生存中に支給されるものなら、その支給を受けた退職者に退職所得として所得税が課税されます。それが死亡に起因してその者の遺族に支給されるものなら、その死亡退職金を受け取ったものに相続税が課税されます。 退職所得の場合は勤続年数(役員ならその任期)が長ければ退職所得控除が多くなり、所得税が低くなります。死亡退職金なら、他の相続財産が少なければ、相続税額は少なくなります。 勤続年数が多く財産が多い方なら生存中に退職金を受給したほうが税金面では少なくなりそうですが、その退職金をそっくりそのまま預貯金などで残して死亡したら、それは遺産となり相続税の課税対象となってしまいます。勤続年数が少なく、あまり財産がない方なら、死亡退職金とすれば税金面では少なくなります。 いろいろなケースがありいろいろなパターンがあります。 いつも申し上げますが、税金をまず先に考えて行動することは本末転倒でいけませんが、生前中に支給するのか死亡を期に支給するかで全然違ってくることだけは覚えていていただきたいと思います。 また支払った法人側は「ほとんど」損金となるといいましたが、その限度額は最終(最高)報酬月額と勤続年数と功績倍率で決まります。 たとえば創業社長で最終報酬月額が100万円で勤続年数(任期)が30年でしたら、100万(報酬月額)×30(勤続年数)×3(功績倍率)=9000万円までが損金となる目安でしょう。もちろん退職金規定などを定めておく必要があります。 今回はここまでにします。 2007年の目次
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