税の豆知識

2007年9月号『所得税 その11-給与所得2』


今回も給与所得の続きです。




堅苦しい解説となりますが、所得税法では以下のように定められています。

収入金額
第三十六条 その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。

つまりこのカッコ書きにあるように金銭以外の物も収入になるということです。
その経済的利益とはどのようなものがあるか、通達において以下のように定められています。

経済的利益
36−15 法第36条第1項かっこ内に規定する「金銭以外の物又は権利その他経済的な利益」(以下36−50までにおいて「経済的利益」という。)には、次に掲げるような利益が含まれる。

  1. 物品その他の資産の譲渡を無償又は低い対価で受けた場合におけるその 資産のその時における価額又はその価額とその対価の額との差額に相当 する利益
  2. 土地、家屋その他の資産(金銭を除く。)の貸与を無償又は低い対価で 受けた場合における通常支払うべき対価の額又はその通常支払うべき 対価の額と実際に支払う対価の額との差額に相当する利益
  3. 金銭の貸付け又は提供を無利息又は通常の利率よりも低い利率で受けた 場合における通常の利率により計算した利息の額又はその通常の利率に より計算した利息の額と実際に支払う利息の額との差額に相当する利益
  4. (2)及び(3)以外の用役の提供を無償又は低い対価で受けた場合における その用役について通常支払うべき対価の額又はその通常支払うべき対価 の額と実際に支払う対価の額との差額に相当する利益
  5. 買掛金その他の債務の免除を受けた場合におけるその免除を受けた金額 又は自己の債務を他人が負担した場合における当該負担した金額に相当する利益


いきなり条文の抜粋で不親切ですが、これらがいわゆる典型的な「経済的利益」ですから、列挙してしまいました。経済的利益というと難しく聞こえますが、要は「トク」したことなんですよね。

つぎに給与所得者に絞ってみますと、給与所得者にも経済的利益が生ずるケースが多いのですが、課税されないケースも結構あります。具体的には、
  • 永年勤続者の記念品等
  • 創業記念品等
  • 商品、製品等の値引販売
  • 残業又は宿日直をした者に支給する食事
  • 掘採場勤務者に支給する燃料
  • 寄宿舎の電気料等
  • 金銭の無利息貸付け等
  • 用役の提供等
・・・などです。一つ一つ解説しているときりがありませんので、紙面の関係上割愛させていただきます。ご興味のある方は国税庁のホームページから基本通達を参照してください。

これらは常識的には「そこまで課税されてはかなわない」といった声に国が容認している感があります。

これらのことは時代の変化に応じてかわってくるわけで、それこそ海外旅行がまだ庶民的なものではない頃などは、会社の社員旅行で会社がその旅費を負担した場合などは当然「経済的利益」とされていたわけですが、今では以下のようになっております。


所得税基本通達36−30
(課税しない経済的利益・・・使用者が負担するレクリエーションの費用)の運用について(法令解釈通達)

 標記通達のうち使用者が、役員又は使用人(以下「従業員等」という。)のレクリエーションのために行う旅行の費用を負担することにより、これらの旅行に参加した従業員等が受ける経済的利益については、下記により取り扱うこととされたい。
 なお、この取扱いは、今後処理するものから適用する。
 おって、昭和61年12月24日付直法6−13、直所3−21「所得税基本通達36−30(課税しない経済的利益・・・・・使用者が負担するレクリエーション費用)の運用について」通達は廃止する。

(趣旨)
慰安旅行に参加したことにより受ける経済的利益の課税上の取扱いの明確化を図ったものである。


 使用者が、従業員等のレクリエーションのために行う旅行の費用を負担することにより、これらの旅行に参加した従業員等が受ける経済的利益については、当該旅行の企画立案、主催者、旅行の目的・規模・行程、従業員等の参加割合・使用者及び参加従業員等の負担額及び負担割合などを総合的に勘案して実態に即した処理を行うこととするが、次のいずれの要件も満たしている場合には、原則として課税しなくて差し支えないものとする。

  1. 当該旅行に要する期間が4泊5日(目的地が海外の場合には、目的地における滞在日数による。)以内のものであること。
  2. 当該旅行に参加する従業員等の数が全従業員等(工場、支店等で行う場合には、当該工場、支店等の従業員等)の50%以上であること。





2007年の目次

12月号『所得税-その14…山林所得』
11月号『所得税-その13…退職所得2』
10月号『所得税-その12…退職所得』
9月号『所得税-その11…給与所得2』
8月号『所得税-その10…給与所得』
7月号『所得税-その9…不動産所得2』
6月号『所得税-その8…不動産所得』
5月号『所得税-その7…個人から法人へ(法人成り)』
4月号『所得税-その6…事業所得(青色申告)』
3月号『所得税-その5…事業所得』
2月号『所得税-その4…配当所得』
1月号『所得税-その3…利子所得の続き』
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