税の豆知識

2007年3月号『所得税 『所得税 その5-事業所得』


確定申告真っ只中。みなさまいかがお過ごしでしょうか。
今回は事業所得について述べたいと思います。




事業所得とは、商工業者、農漁業者、医師、弁護士、俳優、競馬騎手などのように、 事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいいます。ただし、不動産の 貸付けや山林の譲渡による所得は、事業所得ではなく、原則として、不動産所得や 山林所得として取り扱われます。

その事業所得の計算方法はいたってシンプルです。
総収入金額−必要経費=事業所得の金額なのです。

とはいうものの、その計算方法は決して簡単ではありません。といいますのも、 総収入金額は「その年において収入すべき金額」です。その年において収入すべき 金額とは、年末までに相手方に支払を請求することができることになった金額です。 実際に請求したかどうかは関係ありません。必要経費は「債務の確定しているもの」 です(債務の確定によらない減価償却費などの費用もあります)。

つまり、その年に 支払った場合でも、債務の確定していないものはその年の必要経費になりませんし、 逆に支払っていない場合でも、債務が確定しているものはその年の必要経費になります。

次回は青色申告について述べますが、これらは青色申告だろうと白色申告だろうと 関係ない所得税の原則です。よく勘違いしている方がみえます。

つまり「白色なら 収入は実際に入金された金額で、経費は実際に出金した金額で計算する」という 勘違いですが、これは全くの誤りです。これらが許されるなら簡単に所得操作が 出来てしまいます。つまり回収しなければ収入ではない、払わなければ経費では ない・・・、そんなわけないですよね。くどいですが、白でも青でも所得計算の原則は なんら変わりません。

ただ、青の場合は65万の特別控除があったり、親族への給与が 経費として認められたり(青色事業専従者給与)欠損金がむこう3年間繰り越せたり する特典があるということです。

ですから、たとえ白でも、その所得の計算は意外と大変です。減価償却費も計算 しなければなりません。





減価償却のことを知らない方のために解説します。

建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産は時の経過等 によってその価値が減っていきます。 このような資産を減価償却資産といいます。 時の経過等により価値の減少しない土地や骨とう品などは減価償却資産ではありません。

この減価償却資産の取得に要した金額は、取得した時に全額必要経費になるもの ではなく、その資産の使用可能期間の全期間にわたり分割して必要経費としていく べきものです。この使用可能期間に当たるものとして法定耐用年数が財務省令の 別表に定められています。

減価償却とは、減価償却資産の取得に要した金額を 一定の方法によって 各年分の必要経費として配分していく手続のことなのです。

この減価償却の方法には定額法と定率法があり、届出により選択できますが、 届出をしないと法定償却となり、法人なら定率法、個人なら定額法とされます。


◆ 定額法と定率法による減価償却費の計算方法の表
定額法定率法
特徴減価償却費の額が毎年同額
ただし資産を年の中途で取得や
取壊した場合を除く
減価償却費の額は初めの年ほど多く、
年とともに減少する
減価償却の
計算方法
取得価額×90%×定額法の償却率 未償却残高×定率法の償却率
未償却残高とは取得価額から前年までに
償却した額を差し引いた額をいいます
(注)資産を年の中途で取得や取壊した場合には、上記の金額にその年において
事業に使用していた月数を12で除した値を掛けた金額になります


(例)トラックを1月に500万円で取得した場合

◆トラックを1月に500万円で取得した場合の減価償却額の計算の表
定額法定率法
耐用年数5年5年
償却率0.2000.369
1年目の減価償却額900,000円
500万円×90%×0.200
1,845,000・・・@
500万円×0.369
2年目の減価償却額900,000円
500万円×90%×0.200
1,164,195・・・A
(500万円−@)×0.369
3年目の減価償却額900,000円
500万円×90%×0.200
734,608円
(500万円−@−A)×0.369


減価償却は各年の減価償却費の額の累積額が取得価額の95%の金額になるまでできます。

今回はここまでにしておきます。




2007年の目次

12月号『所得税-その14…山林所得』
11月号『所得税-その13…退職所得2』
10月号『所得税-その12…退職所得』
9月号『所得税-その11…給与所得2』
8月号『所得税-その10…給与所得』
7月号『所得税-その9…不動産所得2』
6月号『所得税-その8…不動産所得』
5月号『所得税-その7…個人から法人へ(法人成り)』
4月号『所得税-その6…事業所得(青色申告)』
3月号『所得税-その5…事業所得』
2月号『所得税-その4…配当所得』
1月号『所得税-その3…利子所得の続き』
<< BACK ▲ PAGE TOP