税の豆知識2007年10月号『所得税 その12-退職所得』みなさんお元気ですか? 先月は条文の羅列となってしまい、我ながら「あれはなかった」と反省しております。今月はもう少しわかりやすく解説したいと思います。 今回は退職所得です。 退職所得とは、退職により勤務先から受ける退職手当や一時恩給などの所得をいいます。また、社会保険制度などにより退職に基因して支給される一時金、適格退職年金契約に基づいて生命保険会社又は信託会社から受ける退職一時金なども退職所得とみなされます。その対所得の計算方法は次のとおりです。 (収入金額−退職所得控除額)×1/2=退職所得の金額 です。そしてその「退職所得控除額」は、次のとおりです。 ◆ 退職所得控除額の計算の表
(注)障害者になったことが直接の原因で退職した場合の退職所得控除額は、上記の方法により計算した額に、100万円を加えた金額となります。 例えば勤続年数30年で2000万円の退職金をもらった場合は、その退職所得は、 (20,000,000−15,000,000)×1/2=2,500,000円 となります。 退職所得は、原則として他の所得と合計せず、分離して所得税を計算します。 このような所得は長年の累積的な所得ですから、給与所得や事業所得のように他の単年度の所得と合算して課税するのは少し変です。その所得だけは合算せず、分離して課税するわけです。 具体的には2007年1月号「利子所得の続き」で触れたように
の税率をかけて税額を算出するわけで、給与所得が500万円、事業所得が300万円、退職所得が400万円の場合、給与所得と事業所得は総合課税なので合算して800万円に対して上の算式の23%を掛けて636,000引く(わかりやすくするため所得控除は0とします。現実には最低でも基礎控除の38万円あります)、つまり1,204,000円。退職所得は合算せず20%掛けて税427,500円引く、つまり372,500円。これらの合計1,576,500円が税額となるわけです。退職所得まで合算して高い税率をかけては変だからです。 なお、退職手当等の支払の際に「退職所得の受給に関する申告書」を提出している人の場合は、退職手当等の支払者が所得税を計算し、その退職手当等の支払の際、所得税の源泉徴収が行われるため、原則として確定申告は必要ありません。 一方、「退職所得の受給に関する申告書」の提出がなかった人の場合は、退職手当等の支払金額の20%が源泉徴収されますが、この税額の精算は退職所得の受給者本人が直接税務署に確定申告することにより行うことになります。 次回は役員退職金および死亡退職金について解説いたします。 今回解説中にありました所得控除についてはいずれ解説いたします。 それではよろしくお願いします。 2007年の目次
|