税の豆知識

2007年4月号『所得税 『所得税 その6-(青色申告)』


確定申告が終わりました。今年は駆け込み的な依頼が2,3件あり、最後まで気が抜けませんでした。
みなさまいかがお過ごしでしょうか。

今回は事業所得のつづきで、青色申告について述べたいと思います。





青色申告制度とは、一般の記帳より水準の高い記帳をし、その帳簿に基づいて正しい申告をする人については、 所得の計算などについて有利な取扱いが受けられる制度です。青色申告をすることができる人は、 不動産所得、事業所得、山林所得のある人です。

青色申告の記帳は、年末に貸借対照表と損益計算書を作成することができるような正規の簿記によることが原則です。個人事業をあたかも会社にみたてて会計処理するわけです。ですから簿記の知識がなければ経理処理できません。しかも少し厄介なのが、簿記の知識に一ひねり必要ということです。どういうことかといいますと、日商簿記等の簿記検定は会社の会計処理を前提としています。会社ですから資本金があり、利益を処分したり繰り越したりするわけです。

その簿記のルールを無理矢理個人事業に当てはめるわけですから、会社ではありえない勘定科目が出てきます。それは事業主貸(店主貸)・事業主借(店主借)・元入金の3つです。


事業主貸とは、会社では役員報酬となります。個人事業での事業所得は、収入−経費ですから、事業主が事業主に給与を払うことはありえません。もちろん事業主は儲けから生計を立てているわけですから、事業収入からお金を引き出します。それは給与ではなく「経費にならない支出」として事業主貸と経理するしかないわけです。


事業主借とは、その逆で、「事業所得の収入にならない収入」です。事業主から借りた場合がその典型ですが、他の所得の収入もよくあります。例えば事業用の資産を譲渡した場合、具体的には事業用の車を売った場合で、そのお金が事業用の通帳に入った場合などは、それは譲渡所得となりますから事業主借と経理して、事業所得の収入とはしません。(申告の際に譲渡所得あるいは譲渡損として他の所得と合算あるいは通算します。)


元入金とは、会社での資本金のようなものですが、個人事業では事業主貸・事業主借という勘定科目を使用するため、単純に資産と負債の差額の金額となります。会社では経費にするしかない支出を無理矢理に事業主貸として資産科目にし、しかも翌年度にはその残高を繰り越さないからです。

新たに青色申告をされる人は、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を所轄の税務署長に提出しなければなりません。ただし、その年の1月16日以後に新たに開業した人は、開業の日から2か月以内に申請すればよいことになっています。





青色申告の特典は多数ありますがそのうち主なもの4つを説明します。

まず、「青色申告特別控除」があります。これは、要は上記のとおり簿記の原則に従って経理し、貸借対照表、損益計算書を含んだ青色決算書を確定申告書に添付して期限内に提出している場合には、最高65万円を控除することを認めるというものです。「最高」というのは、例えば所得が5万円の場合でしたら青色申告特別控除も5万円までという話で、65万引いて−60万の所得になるわけではない、ということです。

これらの帳簿上の要件を満たさないと、最高10万円しか控除は認められません。


次に「青色事業専従者給与」という特典があります。

青色申告者と生計を一にしている配偶者やその他の親族のうち、年齢が15歳以上で、その青色申告者の 事業に専ら従事している人に支払った給与は、届出書に記載された金額の範囲内で専従者の労務の対価として適正な金額であれば、必要経費として認めるというものです。白色の場合はこれらの給与は認められませんが、専従者控除という青色よりは弱いですが、控除が若干あります。

なお、青色事業専従者として給与の支払を受ける人は、控除対象配偶者や扶養親族にはなれません。


その他の特典には貸倒引当金の計上が認められるということがあります。これは、その事業の遂行上生じた売掛金、貸付金などの貸金の貸倒れによる損失の見込額として、年末における貸金の 帳簿価額の合計額の5.5%以下の金額を貸倒引当金勘定へ繰り入れたときは、その金額を必要経費として認めるというものです。

とはいうものの、貸倒れが無くて無事すんだ場合には、翌年には戻し入れとして収入としなければならないのですから、このメリットは青色の「初年度のみ」といえましょう。


あと純損失の繰越しと繰戻しについてです。

これは、事業所得などが赤字になり、純損失が生じたときには、その損失額を翌年以後3年間にわたって、各年分の所得から差し引くことが できるというものです。

また、前年も青色申告をしている場合は、純損失の繰越しに代えて損失額を前年の所得から差し引き、前年分の所得税の還付を受けることもできます。


あと特別償却があります。

これは一定の要件に該当する機械などは、取得価額×20〜50パーセントの特別償却として多く費用化できる制度です。前回説明した普通償却に「プラス」して特別償却しますので、いきなりかなり費用化できます。もちろん必ずしも早く費用化すればいいわけではありませんので、利益状況や今後の見通しなどを踏まえた上で検討いたしましょう。





後半はかなり簡単な説明となってしまい、まだ青色申告には上記以外のメリットがありますが、紙面の都合上ご容赦ください。

それではよろしくお願いします。




2007年の目次

12月号『所得税-その14…山林所得』
11月号『所得税-その13…退職所得2』
10月号『所得税-その12…退職所得』
9月号『所得税-その11…給与所得2』
8月号『所得税-その10…給与所得』
7月号『所得税-その9…不動産所得2』
6月号『所得税-その8…不動産所得』
5月号『所得税-その7…個人から法人へ(法人成り)』
4月号『所得税-その6…事業所得(青色申告)』
3月号『所得税-その5…事業所得』
2月号『所得税-その4…配当所得』
1月号『所得税-その3…利子所得の続き』
<< BACK ▲ PAGE TOP