税の豆知識

2006年12月号『所得税 『所得税 その2-利子所得』


いよいよ寒くなってきました。みなさま風邪などひかぬよう気をつけてください。

前回、数回にわけて所得税について述べる旨言ってしまいましたが、よく考えてみたら月一回の豆知識のコーナー。所得の種類ですら10あるのですから、一回で一つの所得の説明をしても一年近くかかってしまいます。しかも事業所得を一回の解説では上っ面もいいところでしょう。

まあ、あまり深く考えずに、とりあえず利子所得からいきましょうか。





利子所得とは、預貯金や公社債の利子並びに合同運用信託、公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る所得をいいます。これらは、租税特別措置法により総合課税の対象から除かれ、その支払者である金融機関において国税15%地方税5%の源泉徴収を受けて課税関係が終了します。

これに対して、これらに含まれない利子(例えば、事業主や友人からの借入れに係る利子)は、利子所得の定義から外れるため、事業所得や雑所得に分類されることとなってしまいます。

よくご質問のあるケースでは、会社の社長さんが自分の会社に貸付金があるケースです。

自分が会社から借りてるときは利息をとられるんだから、逆に貸してるときには利息をもらって当然だろう」というご意見がよくあります。

私は「あまり得策ではありませんからそれは止めたほうがいい、もっと別な方法がありますから・・・」と申し上げ利息を取ることをすすめません。たとえ利息をとっても雑所得となり、この雑所得にかかる必要経費はありませんから、利息金額がそのまま所得となり総合課税の対象となってしまうからです。

総合課税とは、給与所得や事業所得などの他の所得と合算した所得に(所得控除を引いて)税率をかけて計算するというものです。

それに対して上記の利子所得のように、その所得だけは他の所得と分離して税率をかけるものを分離課税といいます。

総合課税となってしまうのなら、まだ社長としての役員報酬(給与)として上乗せしたほうが、前回説明した給与所得控除がある分ましというものです。





また「自分が会社から借りてるときは利息をとられるんだから・・・」とありますが、これはどういう意味か簡単に説明します。

会社は営利目的の合理的経済人なのであるから経済的不合理な行為計算は否認することができるといわれています。法人税法第132条(同族会社の行為又は計算の否認)規定を用いるわけです。

その具体的な代表的事例として、たとえば法人の資産を無償で譲渡したり、低廉譲渡した場合に否認され時価による算定をし、時価で取引をし差額を贈与したとして「寄付金」課税をされる場合、あるいは、法人が無利息貸付けをすると「認定利息」として通常の金利相当分の収益があったとして課税される場合、等があります。

ですから利息として実際にお金を動かさなくても、未収金として利息収入を計上しなければならないわけです。

会社から借りたら利息を払わねばならず、貸しても税金面ではあまり得策ではない。とはいうものの、中小企業の場合、法人税とのバランスを考えて役員報酬は高めに設定する。しかし、資金繰りの関係で実際にはもらえなかったり、もらっても会社にやむなく貸したりするパターンが往々に見受けられます。

これらの会社に対する貸付金は相続の際には貸付債権としてその金額が相続財産として課税されてしまいますので、その金額には相続税をも配慮してその上限を意識することが必要です。

もし会社に繰越欠損金があり、その繰越期限が切れそうな場合でしたら、場合によってはその貸付債権を免除して、欠損金を無駄にしないことも大切でしょう。




2006年の目次

12月号『所得税-その2…利子所得』
11月号『所得税-その1…所得の種類』
10月号『平成18年度の税制改正-その6』
9月号『平成18年度の税制改正-その5』
8月号『平成18年度の税制改正-その4』
7月号『平成18年度の税制改正-その3』
6月号『平成18年度の税制改正-その2』
5月号『平成18年度の税制改正-その1』
4月号『相続税-その5』
3月号『相続税-その4』
2月号『相続税-その3』
1月号『相続税-その2』
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