税の豆知識

2006年5月号『平成18年度の税制改正-その1』


先月末は急遽事務所を移転し、バタバタとしてしまいました。みなさんいかがお過ごしでしょうか。
相続税の話が続きましたので、ここで心機一転、平成18年度の税制改正についてお話させていただきます。





様々な改正がありますが、中でも注目なのは「実質的な一人会社の役員給与の損金算入規制」です。

一般的に、個人事業主さんも規模が大きくなり成長しますと、利益(事業所得)が増え、当然所得税も増えることになります。そこで、その所得税を軽減するため、会社を設立してその役員となり、給与所得者となる。いわゆる「法人成り」をします。

「その所得税を軽減するため・・・」とは具体的に申しますと、例えば事業所得が800万円の個人事業主さんなら、法人成りし、法人(会社)から役員報酬として800万円をもらえば、法人は利益(所得)0なので法人税は0。個人も800万円の給与収入ですから、課税されるのは「給与所得控除後の所得」の600万円に対する課税となるわけです。しかも給与所得ですから個人事業税はかかりません。

きわめて一般的な手法、というか必然的な流れです。会社にすれば取引上の信用も増しますし、節税にもなりますから、しいて個人事業主のままでいつづける意味があまりないからです。

この給与所得控除額は、給与の収入金額に応じて、次のようになります。


給与の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,800,000円以下収入金額 × 40%
650,000円に満たない場合には650,000円
1,800,000円超 3,600,000円以下収入金額×30% + 180,000円
3,600,000円超 6,600,000円以下収入金額×20% + 540,000円
6,600,000円超 10,000,000円以下収入金額×10% + 1,200,000円
10,000,000円超収入金額×5% + 1,700,000円


これに対する規制の網がついに放たれました。

「実質的な一人会社」の場合には、その役員給与の「給与所得控除分」を損金不算入とするというものです。つまり上の例ですと法人の利益は0ですが、法人税の計算上、給与所得控除分の200万円が損金(経費)にならず、法人税の計算上、法人の所得は200万円となり、それに対して法人税が課税される、という規制です。

つまり、「法人成り」の節税メリットがなくなってしまうわけです。

これは余談ですが、単純に、「実質的な一人会社」の社長さんには給与所得控除を認めない、として、所得税を増やすというシンプルな改正ではなく、法人税側で課税するというのは、所得税側では、給与所得の人が「実質的な一人会社」の社長か否かの判定ができないのに対して、法人税側では従来どおりの法人税の申告添付資料でそれが判断できるという課税サイドの事情があるからです。

いずれにしましても、私には到底納得できない改正です。新会社法では資本金が1円でも株式会社が設立でき、法人の設立が容易となります。個人事業主さんが次々と「法人成り」すれば、税収が減りますので、それに対抗する国の策であるのは自明です。

次回はその対策を解説いたします。お楽しみに。




2006年の目次

12月号『所得税-その2…利子所得』
11月号『所得税-その1…所得の種類』
10月号『平成18年度の税制改正-その6』
9月号『平成18年度の税制改正-その5』
8月号『平成18年度の税制改正-その4』
7月号『平成18年度の税制改正-その3』
6月号『平成18年度の税制改正-その2』
5月号『平成18年度の税制改正-その1』
4月号『相続税-その5』
3月号『相続税-その4』
2月号『相続税-その3』
1月号『相続税-その2』
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