税の豆知識

2006年7月号『平成18年度の税制改正-その3』


ワールドカップ残念でした。しかし、もうすぐ夏です。皆様いかがお過ごしでしょうか。

今回は若干税制改正のありました交際費の課税について話したいのですが、それは次回として、今回は法人税の仕組みを話させてください。法人税の基本をおさえておかなければ、交際費課税もあまりピンとこないからです。




会社は商法に従い会計処理します。経費は経費ですし、資産は資産として処理します。一方、法人税法の第22条にうたってありますが、法人の所得は益金−損金という大原則がまずあり、細目は別の規定や租税特別措置法で定められております。それらはもちろんすべて課税を目的としてつくられた法律です。つまり商法と税法の二重基準となっているわけで、利益と所得とは別物ということです。(上場すると証券取引法もからみ三重基準となります。)

もっと詳しく言いますと、例えば会計上経費となる支出だとしても法人税で税務上は損金とならない支出となる場合には、利益と所得が食い違うわけで、会計上赤字でも所得が出て法人税が出るということがあるわけです。

具体的に申し上げますと、役員に対する賞与は会計上経費ですが、税務上は「損金不算入」となっています。ですから、例えば役員賞与500万円を支払って、利益が0円になったケースでは、税務上は所得0円ではなく、所得は500万円となり、課税されてしまうのです。

会計は課税が目的ではありません。法人税はその会計を利用して、その利益に加算又は減算して所得を導き、課税しているわけです。 ですから課税庁側は、例えば不景気になって交際費を企業に活発に支出してほしければ損金不算入額を緩めたり、企業に活発に設備投資してほしければ、通常会計で認められている減価償却費に、さらに特別償却を認めたり、絶えずいろいろ改正し、税収を調整しているのです。現実には「留保金課税」とか「税額控除」とかもあり、所得が全てではありませんが、法人税は「会計上の利益」ではなく「税務上の所得」に対して課税されることを肝に銘じておいてください。

先ほど「役員賞与の損金不算入」を一例としてあげましたが、そのほかにもいろいろあります。「交際費の損金不算入」、「寄付金の損金不算入」、その他「税金」や「罰金」等の損金不算入・・・枚挙に暇ありません。会計上は当然費用なのですが、税金計算上は損金とならないものは結構多いのです。逆に受取配当金の益金不算入なんてのも稀にはありますが。

会計を利用して法人税が課されていることを踏まえた上で、次回は交際費の課税について話したいと思います。




2006年の目次

12月号『所得税-その2…利子所得』
11月号『所得税-その1…所得の種類』
10月号『平成18年度の税制改正-その6』
9月号『平成18年度の税制改正-その5』
8月号『平成18年度の税制改正-その4』
7月号『平成18年度の税制改正-その3』
6月号『平成18年度の税制改正-その2』
5月号『平成18年度の税制改正-その1』
4月号『相続税-その5』
3月号『相続税-その4』
2月号『相続税-その3』
1月号『相続税-その2』
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