税の豆知識

2006年6月号『平成18年度の税制改正-その2』


ゴールデンウィークが終わったかと思うと、3月決算法人の申告が5月末と、どこの税理士事務所もバタバタでしょう。みなさんお元気ですか。

前回に引き続き「実質的な一人会社の役員給与の損金算入規制」について続けます。





法人税法の条文、そしてその施行令も明らかとなりました。この規制の正式名称は「特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入」といいます。 租税特別措置法などの一時的な例外措置ではなく、法人税法第35条により制定されてしまいました。つまり、当面(下手をすると何十年)続く原則的な税制となったのです。

この第35条によると、特殊支配同族会社とは・・・

同族会社の業務主宰役員及び当該業務主宰役員と特殊の関係のある者として政令で定める者がその同族会社の発行済株式又は出資の総数又は総額の百分の九十以上に相当する数又は金額の株式又は出資を有する場合その他政令で定める場合における当該同族会社(当該業務主宰役員及び常務に従事する常務主宰役員関連者の総数が常務に従事する役員の半数を超えるものに限る。)をいう。

・・・と定められています。

要は、経営者とその身内で90%以上の株をもっている会社のことです。
何が特殊支配だ!中小企業のほとんどそうじゃないか!
特殊とは「普通ではない特別なこと」です。日本を支える99.7%の中小企業のうちの大多数を占める会社を指して、「普通ではない特別な会社」というのですから呆れてしまいますね。





では対策です。

まず、条文を見ると、
「百分の九十以上に相当する数又は金額の株式又は出資を有する場合・・・」とあります。

ということは他人に11%持ってもらえればこの条文は適用されないこととなります。
つまり譲渡するなり贈与するなりしてしまえば適用されないわけです。

もちろん名義だけ変え、実際には譲渡もしくは贈与していない場合(当事者にその認識がない)には、その譲渡・贈与は否認されてしまいます。

また、この規定を免れるために譲渡・贈与したとなれば「租税回避行為」となり否認されてしまいますので、その譲渡・贈与に「合理的な理由」が求められることになりましょう。





その他の対策ですが、
条文の括弧書きを見ると、「当該業務主宰役員及び常務に従事する常務主宰役員関連者の総数が常務に従事する役員の半数を超えるものに限る」とありますから、分母の、業務主宰役員と関連のない常務に従事する役員をふやして、二分の一以下にすればよいのです。

業務主宰役員及び常務に従事する常務主宰役員関連者が1名なら、業務主宰役員と関連のない常務に従事する役員が1名増えれば、適用除外されるということです。

業務主宰役員及び常務に従事する常務主宰役員関連者が2名(例えば社長夫婦がともに役員)なら業務主宰役員と関連のない常務に従事する役員が4名いれば適用除外です。

ここで「常務に従事する」とは必ずしも「常勤」という意味ではありませんが、まだ個別具体的にどのようなケースなら「常務に従事している」と認められるかはっきりとしていません。「役員として当然すべき任務をしている」と解釈すべきと私は考えます。いずれにしても名義だけの役員ではダメだということです。当然キッチリ役員会に出席し、経営に参画することとなります。





とりあえず一般的に考えられる対策はこんなところです。

とにかくまず、この規定が適用される会社は、その代表者の給与所得控除額を計算して、その影響額を試算してください。その金額と、上に挙げたような対策と両天秤にかけてください。

無理矢理役員を増員したが、免れた「損金不算入額」以上の赤字となってしまった。増員役員が煩わしいだけだ・・・。とか、無理矢理株式を譲渡したが、譲渡先の株主が煩わしい。少しばかりの法人税をケチったためにえらい目食った・・・。ということは十分にありえます。

この改正をいいタイミングとして、役員の増員の必要性、株主の移動の必要性があれば、ぜひいい機会として行うべきでしょう。あとは両天秤にかけて判断してください。

それではよろしくお願いいたします。




2006年の目次

12月号『所得税-その2…利子所得』
11月号『所得税-その1…所得の種類』
10月号『平成18年度の税制改正-その6』
9月号『平成18年度の税制改正-その5』
8月号『平成18年度の税制改正-その4』
7月号『平成18年度の税制改正-その3』
6月号『平成18年度の税制改正-その2』
5月号『平成18年度の税制改正-その1』
4月号『相続税-その5』
3月号『相続税-その4』
2月号『相続税-その3』
1月号『相続税-その2』
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