税の豆知識

2006年9月号『平成18年度の税制改正-その5』


お盆休みもおわり、夏も終わりに近づいてまいりました。それでもまだまだ暑い日が続きます。
皆様いかがお過ごしでしょうか。

今回は平成16年度の税制改正のなかで、あまり騒がれてはいませんが、重要な改正をレクチャーさせていただきます。 それは、役員給与について損金算入される範囲の見直しが行われたことです。





従来は、通常の役員給与(報酬)は、賞与でないかぎり損金となり、その増額及び減額は株主総会あるいは社員総会の決議があれば認められていたのですが、要件が非常に難しく次のように改正されました。

つまり、法人がその役員に対して支給する給与のうち損金算入されるものの範囲は、次に掲げる給与とされました。

  1. 支給時期が1月以下の一定の期間ごとであり、かつ、当該事業年度の各支給時期における支給額が同額である給与その他これに準ずる給与(定期同額給与
  2. その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与で、一定の要件を満たすもの(事前確定届出給与
  3. 同族会社に該当しない法人がその業務を執行する役員に対して支給する利益に関する指標を基礎として算定される給与で、一定の要件を満たすもの(利益連動給与

3が適用されるのは同族会社に該当しない会社なので、ほとんどの中小企業には関係ないので割愛し、まず「定期同額給与」について説明します。





定期同額給与とは、役員に対して支給する給与で次に掲げるものをいいます。

  1. その支給時期が1月以下の一定の期間ごとであり、かつ、当該事業年度の各支給時期における支給額が同額である給与
  2. その支給時期が1月以下の一定の期間ごとであるもの(以下「定期給与」といいます。)の額につき当該事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3月を経過する日(以下「会計期間3月経過日」といいます。)までにその改定がされた場合における次に掲げる定期給与。

    @) その改定前の各支給時期(当該事業年度に属するものに限ります。Aにおいて同じ。)における支給額が同額である定期給与。
    A) その改定以後の各支給時期における支給額が同額である定期給与。
  3. 定期給与の額につき当該法人の経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由によりその改定がされた場合(減額した場合に限り、Aに該当する場合を除きます。)の当該事業年度のその改定前の各支給時期における支給額及びその改定以後の各支給時期における支給額がそれぞれ同額である定期給与。
  4. 継続的に供与される経済的な利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるものです。


役員報酬は毎月定額な会社がほとんどですので、Aが問題となります。
つまり簡単に言いますと、役員報酬を増額してそれを損金にするには、会計年度が開始してから3ヶ月以内にそれ以降分を決めておかないとだめだということです。





例えば3月決算法人なら、4,5,6月中に7月以降分の増額を決め、その増額を継続しないといけないわけです。

また、増額が8月以降と一ヶ月ずれ込むと、要件から外れてしまうので、それは「定時同額給与」に該当しないということとなり、損金に算入されなくなってしまうのです。

会計年度が始まってから3ヶ月以内に、向こう一年分の役員報酬を決めなければならないのですから、今まで以上に将来の見通しや事業計画をたてておく必要があるといえましょう。

要件にきっちりとあてはめて、きっちり全額損金算入といきたいものです。

次回は事前確定届出給与について話す予定です。




2006年の目次

12月号『所得税-その2…利子所得』
11月号『所得税-その1…所得の種類』
10月号『平成18年度の税制改正-その6』
9月号『平成18年度の税制改正-その5』
8月号『平成18年度の税制改正-その4』
7月号『平成18年度の税制改正-その3』
6月号『平成18年度の税制改正-その2』
5月号『平成18年度の税制改正-その1』
4月号『相続税-その5』
3月号『相続税-その4』
2月号『相続税-その3』
1月号『相続税-その2』
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