税の豆知識

2006年10月号『平成18年度の税制改正-その6』


夏も終わり、いよいよ秋です。秋といえば食欲の秋。皆様うまいもの食べてますか?
前回の続きで、今回は「事前確定届出給与」について話します。




これは、よくいいますと、「従業員に支払う夏と冬の賞与のように、役員に同様な賞与を支払っても会社の経費として認められる制度」と言えましょう。

事前確定届出給与とは要約すると「定期同額給与以外の支給形態で役員に報酬を支払う場合に、そのことを税務署に事前に届出れば、それらの報酬を会社の経費として認めるという制度」だからです。

しかし、悪く言うと、「面倒くさくてあまり意味のない制度」でしょう。
この事前に届出ることがまず面倒です。

@役員給与に係る職務執行を開始する日
A会計期間開始の日から3ヶ月以内

のいずれか早い日までに届出ることが必要なのです。

例えば、職務の執行開始日が5月25日であれば、会計期間開始の日から3ヶ月である6月末日より早いため、5月25日までに届け出なければならないということです。

しかも、税務署へ届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合には、どのように取り扱われるかといいますと・・・

「事前に支給額が確定していたものといえない」とみなされ、事前確定届出給与に該当しないものとなります。したがって、それが増額支給であれば増額分だけでなく実際の支給額の全額が損金不算入となり、減額支給であれば実際に支給した金額が損金不算入となります。

「事前確定届出給与」は、支給時期、支給金額が事前に確定し、実際にもその定めのとおりに支給される給与に限られるのです。とても窮屈な制度ですね。





ですから、こんな制度を利用せず、前回説明した定期同額給与に、賞与分の金額を織り込めばいいのです。つまり賞与120万ぐらいなら、それを12ヶ月で割った10万円ぐらいを定期同額給与に上乗せしておけばすむ話なのです。「面倒くさくてあまり意味のない制度」といった意味がお分かりいただけたでしょうか。

また、この制度は、定期同額給与以外の役員に対する給与に対して適用されますので、非常勤役員に対する役員報酬については注意しなければなりません。

つまり、非常勤役員に対して、年1回だけ役員報酬を支払っても、今までの税法の規定では会社の損金として認められていたのですが、今後は定期同額給与でないということで事前確定届出給与の対象になってしまうのです。

非常勤役員に対する年払い役員報酬も、事前に税務署に届け出なければ役員賞与とされて、損金にならないということです。年払いはやめて定期同額給与にしておきましょう。

新会社法の施行で、法人化が簡単にできるようになりますので、役員報酬に対する規制をかなり強化してきたことは前回もふれましたが、これはまた違った視点から更に強化してきたといえます。




2006年の目次

12月号『所得税-その2…利子所得』
11月号『所得税-その1…所得の種類』
10月号『平成18年度の税制改正-その6』
9月号『平成18年度の税制改正-その5』
8月号『平成18年度の税制改正-その4』
7月号『平成18年度の税制改正-その3』
6月号『平成18年度の税制改正-その2』
5月号『平成18年度の税制改正-その1』
4月号『相続税-その5』
3月号『相続税-その4』
2月号『相続税-その3』
1月号『相続税-その2』
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