税の豆知識

2006年3月号『相続税-その4』


今回は相続税の「配偶者に対する相続税額の軽減」についてお話します。

配偶者に対する相続税額の軽減とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際にもらった正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です(相続税の申告が要件ですので、申告しないと軽減されません)。

@1億6千万円
A配偶者の法定相続分相当額

つまり、配偶者は法定相続分(最低二分の一。場合によっては全額)までは相続税がかからず、さらに、たとえ法定相続分以上であっても、1億6千万円までは相続税がかからない、ということです。

配偶者への相続は、相続財産の横へのスライドなので、次世代という下へのスライドではないので、課税が緩やかになっているのです。

目先の相続税にとらわれることなく、この制度を利用し、配偶者の近い将来の相続(二次相続)を見据えて、一次と二次の相続税の総額を勘案して一次相続を決定することも必要だと考えます。

同時に、価値が必ず下がる建物等の財産、価値が上がりそうな株等の財産を見極め、その配分を決することも大切です。




この配偶者の税額軽減は、配偶者が遺産の分割などで実際にもらった財産を基に計算するので、相続税の申告期限までに配偶者に分割されていない財産は税額軽減の対象になりませんので注意が必要です。

ただし、申告期限までに分割されなかった財産について、「申告期限後3年以内の分割見込書」を相続税申告書に添付しており、申告期限から3年以内に分割したときは税額軽減の対象になります。この場合、分割が成立した日の翌日から4か月以内に更正の請求という手続をする必要があります。

なお、相続税の申告期限後3年を経過する日までに分割できないやむを得ない事情があり、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」をその提出期限後3年を経過する日の翌日から2か月以内に提出し、税務署長の承認を受けた場合で、その事情がなくなった後4か月以内に分割されたときも、税額軽減の対象になります。

もっとも申告期限以内に分割できないのは、たいてい揉めているケースですので、「申告期限後3年以内の分割見込書」が無駄となってしまう場合が多い気がします。





今回ご紹介した相続税法第19条の2の規定による配偶者の相続税の軽減と同様に、申告期限以内に分割できない場合には、所定の要件をみたさないとその特典を受けられないものとしては、租税特別措置法第69条の4の規定による「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」及び租税特別措置法第69条の5の規定による「特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例」があります。

これらの特典は次回にご紹介いたします。それではよろしくお願いします。




2006年の目次

12月号『所得税-その2…利子所得』
11月号『所得税-その1…所得の種類』
10月号『平成18年度の税制改正-その6』
9月号『平成18年度の税制改正-その5』
8月号『平成18年度の税制改正-その4』
7月号『平成18年度の税制改正-その3』
6月号『平成18年度の税制改正-その2』
5月号『平成18年度の税制改正-その1』
4月号『相続税-その5』
3月号『相続税-その4』
2月号『相続税-その3』
1月号『相続税-その2』
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