税の豆知識

2005年12月号『相続税-その1』


今回から数回に分けて相続税についてお話したいと思います。

相続の仕組みを知らずして相続税は語れませんので、まず、相続の仕組みについて説明します。
これらはしっかりとおさえておいてください。





相続とは、亡くなった人の財産上の地位(その者に属していた一切の財産的権利義務)を、家族などの相続人が受け継ぐことをいいます。

亡くなった人を「被相続人」、財産を受け継ぐ人を「相続人」といいます。
なお、失踪宣告を受けた人は死亡したものとみなされますので、死亡した場合と同様に相続を開始します。

配偶者は常に相続人となります。ただし、戸籍上に入籍していることが要件ですので、いわゆる内縁の妻や離婚した前妻には相続権がありません。

血族は順位により相続人が決まります。

  • 第1順位 被相続人の子(子が死亡している場合は孫)
  • 第2順位 被相続人の父母(父母がいない場合は祖父母)
  • 第3順位 被相続人の兄弟姉妹(死亡している場合は兄弟姉妹の子、すなわち被相続人の甥・姪)

ですから、例えは「夫婦と子供2人で夫が死亡した場合」の相続人は、妻と子供2人となります。





次に法定相続分についてですが、相続人が受け取る財産の割合を相続分といいますが、各相続人の割合について被相続人の遺言による指定がないときは、民法で定める割合が適用されます。

これを法定相続分といいます。

  1. 配偶者のみ
    • 配偶者がすべて取得する。
  2. 配偶者と第1順位(子)
    • 配偶者が2分の1、第1順位者が2分の1
    • 配偶者がいない場合は、第1順位者がすべて取得
  3. 配偶者と第2順位(父母)
    • 配偶者が3分の2、第2順位者が3分の1
    • 配偶者がいない場合は、第2順位者がすべて取得
  4. 配偶者と第3順位(兄弟姉妹)
    • 配偶者が4分の3、第3順位者が4分の1
    • 配偶者がいない場合は、第3順位者がすべて取得

となりますので、前述の例ですと、配偶者1/2、子供A1/4、子供B1/4となります。
もちろん、遺言がなければ、遺産は相続人同士の協議によって分割を決めることになります。

法定相続分は、要は、分割協議がまとまらず、調停もしくは裁判になったときに決せられる割合ですから、分割協議の際にはこれらの数字は全く無視してかまいません。





かつては「印鑑代100万円」といった感じで、長男がすべて相続し、その他のものには100万程度の現金を払っておしまい、ということが多々見受けられました。

しかし最近は事情が違ってきました。相続人の権利意識が高まり、関係のない者(例えば相続人の妻や夫)の横槍が入ることもしばしばで、「調停もしくは裁判になれば法定相続分は認められる」と考える人さえ現れ、なかなか協議がまとまらない傾向にあると思います。

戦前の旧民法では、相続は家督相続であり、戸主を引き継ぐことでした。
戦後民法の改正により現行のようになりましたが、長男が主に相続するという日本人の精神というか、風習といいますか、習慣は確かに根強く残っていたのです。

いい悪いは別として、それが最近急激に薄らいだような気がします。




2005年の目次

12月号『相続税-その1』
11月号『消費税の仕組み-その3』
10月号『消費税の仕組み-その2』
9月号『消費税の仕組み-その1』
8月号『勘定合って銭足らず』
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