税の豆知識

2005年8月号『勘定合って銭足らず』


第一回は「勘定合って銭足らず」について話させていただきます。 これは「知って得する」という類のものではなく、肝心要のことですので、はじめにどうしても取り上げておきたいのです。





個人企業の事業主さんは事業所得として所得税、法人企業の場合は法人の所得として法人税が課税されるわけですが、その課税は大雑把に言えば、会計原則に基づいて計算された「利益」を元に算出されます。

ですから会計のおおまかな知識は税金を考える上で必要です。 ところで現実の企業経営は資金繰りが非常に重要です。会計上の利益よりも大切だと感じている経営者の方も多く見られます。

といいますのも、「カネ」がうまく回らないと、いくら利益が出でいても「まずい」ことを肌身に感じておられ、黒字倒産もありうることを知っているからです。





あまりピンとこないかもしれませんが、単純な例をあげてみます。

物を仕入れて売る小売業を資本金300万円で設立したとします。
300万円まるまる仕入れに充て、350万円でその物を販売したとします。

仕入れ代金は支払ったものの、肝心な売掛金は回収できずにいたとします。 その段階で決算を迎えたとしますと、決算書(「貸借対照表」で資産と負債の財政状態を、「損益計算書」で当期の損益を示す)の当期利益は、損益(収入・費用)ベースで考えますと、

『収入−経費』 つまり 『売上−仕入=50万円』となり、
貸借(資産・負債)ベースでも同一で、 『資産の増加−負債の増加』つまり『預金(資産)300万円→売掛金(資産)350万円 50万円の利益』として、その会計上の利益50万円に対して課税されてしまうわけです。

利益と資金繰りは別物なのです。 預貯金の増減と課税は無関係ということを、肝に銘じておくことが企業経営の出発点と思います。





2005年の目次

12月号『相続税-その1』
11月号『消費税の仕組み-その3』
10月号『消費税の仕組み-その2』
9月号『消費税の仕組み-その1』
8月号『勘定合って銭足らず』
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